みなさま、こんにちは!
チェロを題材にした絵本がたくさんあることをご存知ですか?
音楽愛好家の方や、今レッスンを頑張っている子供たちや大人たちはもちろん読んでいただきたいですが、
絵本の中なら、まだ小さくてなかなかコンサートに行くことができないお子さんも音楽の世界に触れることができます。
それぞれの物語の登場人物たちはどんなチェロの音色を聴いてこんな気持ちになったのだろうと想像してみたり・・・
今回は4つの物語をご紹介します!
チェロの木 いせひでこ作
森の木を育てる仕事をしていたおじいさん、ヴァイオリンやチェロを作る仕事をしているとうさん、そんな二人を見て育った主人公の「わたし。」
ひとりでよく森に行き、自然の声に耳を傾け、四季の移り変わりを感じ、森と一緒に時を過ごしていました。
ある日聞いたコンサートでチェロの音色に心奪われたわたし。
それにに気づいたとうさんは、あるものを作り始めますが・・
作者のいせひでこさんは東京芸術大学のデザイン科を卒業されていますが、子供の時からチェロを習っていました。
見開きいっぱいに目に飛び込んでくる絵が本当に色彩豊かで、まるで音楽を聴いているかのような絵本です!
そして、子供である「わたし」の目線で、音楽とはなにかを優しく語りかけてくれます。
それは一生懸命さらっていると見失っていたり、わからなくなることもあります。
読み終わって、音を出す喜び、表現する喜び、みんなと音楽でつながる喜び、すべての音楽の喜びや感動を、絵本を通してわたしたちと分かち合ってくれたいせさんに改めて感謝の思いです。
チェロをやっている方だけでなく、音楽を愛するすべての方におすすめの一冊!
1000の風1000のチェロ いせひでこ作
続いてご紹介するのも、いせさんの作品です。
チェロを習っている主人公の少年と、最近同じチェロ教室に入ってきた少女が、阪神淡路大震災復興支援チャリティー「1000人のチェロ・コンサート」への参加を決め、そこで出会ったおじいさんと一緒に本番に向けて練習に励んでいきます。
練習し交流を深めていく中で、命の大切さやこのコンサートの意味を知り、2人の音は徐々に変化していき、やがて本番の日を迎えます・・
最後の本番のシーンは圧巻で、まるで1000人の弾くチェロの音色が絵本から聞こえてきそうです。
私は「1000人のチェロ・コンサート」には参加したことはありませんが、自分がこれまでに参加した心に残る本番を思い出し、あぁ音楽ってこうだよなぁと、まるで自分が演奏しているような気持ちで読みました。
チェロを通して人々の心が一つになり、平和と復興を祈念し未来へ音を届ける、音楽の根源の部分を絵本を通じて感じました。
O(オー)じいさんのチェロ ジェーン・カトラー作
続いてはアメリカの作家、ジェーン・カトラーさんの絵本です。
この物語の主人公の女の子は、今戦争に巻き込まれています。
電気もガスも止まり、いつ爆弾が落ちてくるかわからない、お父さんも戦争に行っている、毎週水曜日にみんなで広場に並んで救援トラックから物資の配給を受けるのが唯一の楽しみでした。
ある時、近所のいつも怒ってばかりの「Oじいさん」が広場で弾いてくれたチェロに女の子はとても勇気をもらいますが、そのチェロも戦争で・・・
「人に勇気を与えるから演奏さえも敵からやめさせられるかもしれない」というシーンはとても恐ろしく感じました。
食べ物のように直接お腹を満たしたり、薬のように直接傷を治せなくても、音楽には見えない力があって、戦争は人間がそれに励まされたり癒されたりすることすら奪おうとするのです。
戦いとは無縁に思える音楽さえも、歴史上では戦争の道具に使われてきました。
現代に生きる私たちにとって戦争は決して人ごとではなく、同時に音楽の真の意味も考えさせられる物語です。
セロ弾きのゴーシュ 宮沢賢治作
最後になりましたが、チェロの物語といえば、やはり「セロ弾きのゴーシュ」ですよね!
ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りをしていましたが、あんまり上手ではないのでいつも楽長に怒られていました。
ゴーシュが家で練習していると夜な夜な動物たちが尋ねてきます。
それぞれの動物たちのお願いを聞きながら、チェロの練習を続けるゴーシュ。
ある日、ゴーシュが演奏会でソロを弾く機会が訪れます。
下手くそだったゴーシュのチェロにも変化が・・!?
「セロ」とは、チェロのことです。
作者の宮沢賢治自身もチェロを弾いていました。
私は岩手県花巻市にある「宮沢賢治記念館」に行って、そこに展示してある賢治のチェロを実際に見たことがあります。
作り手や持ち主が亡くなった後も、弦楽器は何百年も生き続けることができます。賢治のチェロを今弾いたらどんな音がするのでしょう。調べたら、2023年に賢治の没後90年企画で賢治のチェロを使ったコンサートがあったようです。
下手っぴで怒られて、拗ねて悪態をついてしまったり・・楽器をやっているとみんなゴーシュみたいな経験をしたことありますよね。
そんなゴーシュのチェロも誰かの力になったり、人や動物の心を癒していたことに気づき、ゴーシュ自身も音楽も変わっていきます。
賢治らしい文体と独特の世界観で音楽の大切なことを伝えてくれる、いつまでも読み継がれてほしい物語です。
花巻市には賢治ゆかりの施設がたくさんあります!
宮沢賢治記念館(賢治のチェロが展示してあります。)
宮沢賢治童話村
宮沢賢治イーハトーブ館