オーケストラの中でチェロはどんなことをしているのでしょうか?
低音を支えることもあれば、内声を担当する時もあります。
そして、ここぞ!というときにとても美しいメロディーが回ってくる時もあります。
この記事では、そんなチェロが活躍するオーケストラ曲をご紹介します。
ここで紹介するのは、すべて私が実際オーケストラの中で弾いてみて本当にいいなと思った曲ばかりです♪
※今回ご紹介する以外にもオーケストラの中でチェロが活躍する曲がたくさんあります。この記事では私の独断と偏見で8つ選んでいますのでご了承ください。
ぜひチェロに注目しながら聴いてみてくださいね!
ドヴォルジャーク:交響曲第8番 第1楽章
日本で、通称「ドボ8 (はち) 」と呼ばれて親しまれているよ。
ドヴォルジャークが作曲した8番目の交響曲、超人気曲で演奏される機会も大変多い作品です。
この曲はそれ以前の交響曲に比べ、ドヴォルジャークの独自の色をよりはっきりと感じ取ることができます。
チェコののどかな自然を感じさせるメロディ、ドヴォルジャークが大好きだったと言われる列車のようなリズム、曲全体から祖国チェコへの愛が感じられ、彼を形作っている色々な要素がこの第8番の交響曲で結実しています。
そんな彼の最高傑作の1つであるこの交響曲の冒頭は、チェロのメロディから始まります!
素敵な物語の始まりを予感させますよ。
個人的には、初めて海外公演に参加することになった時に、フランスでこの曲を演奏したので、大変思い出のある曲です。
ベートーヴェン:交響曲第9番 第4楽章
「第9(だいく)」と呼ばれているぞ。
日本では年末の風物詩のようになっている「第9」、
第4楽章の冒頭部分、チェロ+コントラバスの「レチタティーヴォ」から始まります。
レチタティーヴォとは、主にオペラなどで話し言葉のように歌われる部分のことなのですが、それを器楽でやるというベートーヴェンの画期的な試みなのです!(のちにバリトンで歌われる)
あの「歓喜の歌」に入る前の、チェロ+コントラバスとオーケストラのやり取りにぜひ注目してください。
ところで、この「第九」は演奏時間が全部で70~75分くらいあります。
初めての方はそんなに長いの!?と驚かれるかもしれませんが、実際ライブで聴いてみると全く長く感じません!
むしろ、最後の「歓喜の歌」を聴き終わった後は、人類最高!というような高揚感に見舞われると思います。
今年の年末も、日本中で演奏されますよ!
ぜひ一度、生の「第9」を体感しに行ってみてください!!
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」 第2楽章
ジャジャジャジャーン!!!
の始まりがあまりにも有名なベートーヴェンの交響曲「運命」ですが、その第2楽章は聴いたことありますか?
第1楽章の厳しさとは打って変わって、のどかなメロディから始まるのが第2楽章です。
ヴィオラとチェロが一緒に弾いていますよ!
この曲は変イ長調(As dur)で、なかなかチェロで弾くのは難しいです。
最初のメロディが徐々に変奏されていく形式の曲です。
何度も最初のメロディが姿を変えながら登場するたびに、あの時はこうだったな、あの時はああだったなと懐かしい思い出を振り返っていくような感じがします。
ブラームス:交響曲第2番 第2楽章
ブラームスは1877年、避暑のために訪れていたヴェルター湖畔のペルチャハでこの曲を作曲しました。
約20年近くを費やして完成された交響曲第1番と違い、この第2番はとても速く書き上げられました。(1877年夏頃から描き始め、初演はその年の冬)
ここでは旋律が飛び交っているので、それを踏みつけないように用心して歩かなければならない。
と、ペルチャハの風景に感激し、創作が順調であることを友人に打ち明けていました。(珍しい・・)
旋律が飛び交っている・・素敵ですね!
そんな充実した中で書かれた第2番、本当にスケールの大きい作品です!
第2楽章の冒頭がチェロのメロディから始まります。
複雑なメロディではありますが、私の中では朝靄の中からぼわーっと美しい湖や山の風景がだんだん現れてくる感じがして、大好きな出だしです😊
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」第2楽章
チャイコフスキー最後の交響曲であり、最後の大作でもある交響曲「悲愴」
初演は1893年10月16日、そのわずか9日後にチャイコフスキー自身が急死していることも、この交響曲の神秘性を強めています。
この「悲愴」というタイトルは初演後、チャイコフスキーの弟のモデストが思いついたとされ(諸説あり)、
初版は無題で、第2版以降に付けられました。
チャイコフスキー自身が自分の死をどのくらいまで予感してたかはわかりませんが、人生を集約するような交響曲を書こうとしていたことは残された手紙からわかっています。
死を予感した時、その作曲家の作風が変わる
私がこの曲を初めて演奏した時に指揮者の方がおっしゃった言葉です。
第2楽章はチェロのメロディによる4分の5拍子の珍しいワルツですが、スラブ民族の中では5拍子のワルツは珍しいことでもないそうです。
プロコフィエフ:ロミオとジュリエット
プロコフィエフが残した素晴らしいバレエ音楽の一つが「ロミオとジュリエット」です。
もうこれは、、私の中では吉田都さんの英国ロイヤルバレエ団の引退公演がとても印象に残っています。
なんて可憐で可愛らしいジュリエットだったことでしょう!
(残念ながら生では観ていませんが・・再放送してください!!)
しかし、あの無垢な心が悲劇を生むんですよね・・・
そんなロミジュリの中で、やっぱり有名なのがあのバルコニーのシーン。
プロコフィエフは、そこにチェロの美しい旋律をあてがいます!(とても弾くのは難しいです)
ちなみにプロコフィエフ自身がバレエ曲を抜粋し組み直した「組曲」版もあります。
「ロミオとジュリエット」第1組曲、第2組曲、第3組曲とあります。
こちらは演奏会向けなので、オーケストラの演奏会で楽しむことができます。
ぜひバレエも観てください!
エルガー:エニグマ変奏曲
「エニグマ」というタイトルを聞いた事はありますか?
日本語では「謎」と呼ばれています。
「エニグマ」は主題と14の変奏曲からなっていて、各変奏曲はそれぞれエルガーの親しい友人を思って作られており、各曲にその友人のイニシャルや名前が添えられています。
第13変奏にはイニシャルも名前も添えられておらず、「 * * * 」となっており、名前が特定できません。
しかし、そのために「エニグマ」というのではありません。
「エニグマ」とは、エルガー自身が解説で
「すべての変奏の基盤となっている、もう1つの聞き取ることのできない主題が存在する」
と記述したことに由来します。
第12変奏 ” B.G.N.” でチェロがメロディを奏でます!
B.G.Nこと Basil G. Nevinson は、優れたアマチュアのチェロ奏者でした。
この変奏は大親友であったネヴィンソンへの素朴な追悼であるそうです。
大切な人や友人一人一人を思ってこんな曲を書くなんて、エルガーは素敵な人ですね。
また、第9変奏の「ニムロッド」は大変美しい名曲で、アンコールなどで単独で演奏されることもあります。
R.シュトラウス:英雄の生涯
R.シュトラウスの「英雄の生涯」はかっこいい低弦とホルンの英雄のテーマから始まります。
この「英雄」とは、、、
なんと!R.シュトラウス本人!(と言われている・・)
しかも、作曲者本人が34歳頃書かれたというのだから、まだ自分を英雄というには早すぎるのでは‥と思ってしまいますが🤫笑
曲は6部分からなります。
- 英雄
- 英雄の敵
- 英雄の妻
- 英雄の戦場
- 英雄の業績
- 英雄の引退と完成
切れ目なく演奏され、演奏時間は45分ほどです。
ヴァイオリンソロも美しいですし、ホールで聴くと大迫力です!!
ぜひ英雄の生涯の冒頭、チェロ、コントラバス、ヴィオラ、ホルンに注目してみてください。
まとめ
オーケストラでチェロは大体8人〜10人くらいいます。
チェロ奏者一人一人の音色が混ざり合い、みんなで一つになった時の音ってソロや室内楽とはまた違って良いんですよね。
そんなところもオーケストラの中のチェロの魅力の一つだと思います!
オーケストラの中でチェロの新しい魅力を発見してもらえたら嬉しいです!